時計は既に2時を回っていた。
スタンドの明かりだけでぼんやりと照らされた薄暗い天井を見つめながら、私はなかなか寝付けないでいた。
………いよいよ明日、私は六軒島に向かう。
もしかしたらそこで、私の求めていた答えが見つかるかもしれない。見つからないかもしれない。
でもどちらにしろ、私の旅は、そこで終着を迎えるのだ。
「…………」
そこで考えるのをやめて寝返りを打った。目を閉じてはみたが、なんだか真っ暗闇の中にひとり置き去りにされたような気持ちになって、結局はもう一度目を開けて見慣れない部屋を眺めていた。
あの襖一枚を隔てた向こう側には、天草がいる。今までなんだかんだで護衛として私の旅に付き合わせていたけれど。
……そうか。天草とのこの不思議な二人旅も、明日で終わり、……か。
『うりゅ…。縁寿、さみしい……?』
「…どうかしら。分からないわ」
不安そうにこちらを見つめるさくたろうを、抱き締める。
さくたろうはやわらかくて…そして、あたたかい。ぐっと腕に力を込めると、腕の中でもぞもぞとさくたろうがもがいた。
『苦しいよ…、縁寿』
「………きっとね。真里亞お姉ちゃんはね、あなたのぬくもりに、何度も何度も助けられていたんだわ」
『……うりゅ。ボクは、真里亞の力になれてたのかな…?』
「ええ。私が羨むくらいにね」
『…………ボクは、縁寿の力にも、なりたいよ。…ボクじゃ、駄目なの……?』
「くす。……ありがと、さくたろ」
だから、さくたろうのぬくもりを感じながらも、私はどうしても考えてしまう。
真里亞お姉ちゃんの側には、ずっとさくたろうがいて。
…私には、誰がいたのだろう。
誰が、私の大切だったのだろう。どうしようもなく悲しくて辛い時。心が引き裂かれそうだった時。誰が、側にいてくれたのだろう。
私の帰るべき場所は、何処……?
『………縁寿、』
「ごめんね、さくたろう…。やっぱり私…少しだけ、さみしい、」
さくたろうを抱き締めたまま、私は布団の中で声を上げずに泣いた。
明日には、この気持ちが消えているように。
